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その名前。

2010.03.29 *Mon


幾つになったって分からないままのものがある。


年を重ねる程に、わからなくなっていくものが、ある。



「……あ、起きた?」

耳を震わすまだ少しだけ幼い声と、残る微かな鉄のにおい。
視線だけ其方に投げれば、柔らかな桃とかち合った。ソファの背に手をついて体を起こす。ぐらり、回る視界。

「…いつ、来たの」
酷く掠れた声。2時間くらい前。返って来た答えに携帯を開いた。10時。何時に寝たんだっけ、ぼんやり思いながら差し出された紅茶を受け取る。赤に近い色。どこかで、見た、様な、。
息が詰まった気がした。手から滑り落ちそうになったカップを確りと持ち直す。嗚呼そうだ、この色は。この色は、
あの子だ。あの子の、ひとみのいろ、に、似ている。よくわからない想いに駆られて瞼を伏せた。よくわからない、そう、わからない。

「蒼衣?…まだどっか痛い?」「大丈夫、…だいじょうぶ、よ、……わたしは、何て事無かったの」
ゆるり、瞼を上げた。覗き込む桃色。何とか笑みを浮かべて、ゆっくり首を振った。不思議そうに細められる瞳に、口が開く。

「……、…頭ではね、分かっているの。二度と会えない事。さよならって、事。またねはもう、無いんだって事」
「…うん」
「もう、…居ないんだって、分かってるのよ。分かってるのにね、」

わたしは、あの子を想って泣くことも、できないの。言い切って、どうしようも無く虚しくなった。
大好きだった。大好きだ。数少ない、私の、友達。悲しいはずなのに苦しいはずなのに痛い、はずなのに、私のこころは何も言わない動かない。唯、只管に虚しくて、よくわからなかった。こんな時でさえ上手く扱えない。もういっそ投げ捨ててしまえたら、楽なのだろうか。
深く、溜息を漏らせば、目の前のきれいな顔が泣き出しそうに歪んだ。驚いて手を伸ばして、頬に触れる。暖かい、ひとの、温度。どうしたの、尋ねる。

「どうしたのは、こっちの台詞。…なんで、そんなに、辛そうな顔してんの」
ぱちり、瞬きした。つらそうな、かお。息苦しくなって、でも言いたくなって、口を開いた。情けないくらいに震えた声で、あのね、と、言った。
「……遠いの。わたしの中身は、私からずっと遠いところにあって」
どうしようもなく胸は塞がれるし吐き出したくて堪らない何かがあるのに、何か分からない。硝子窓の向こう側。
自分の感情を必死に探して拾って、けれど名前が分からない。名前は知っているはずなのに。何処か皆本の中の言葉の様。おかしいでしょう、意味も名前も知っているのに、理解出来ないの。わたしは、わたしは、
「だいじなものを、全部、置いてきてしまったの」
それがどうしようもなく、痛い。何処かで引き攣れる様な痛みを、覚えた気がした。冷たいわたしの手を、白くてきれいな、けれど確りした手が、握る。
もう少し寝たら、少しだけ震えた声が聞こえた。そうね、同じ位震えた声で、返した。


(握った手は暖かかった。 あの子もそうだったなぁ、想ったらほんの少しだけ、なきたくなった)
(なきたくなる気持ちが何なのかは、わからないけれど ただ、)
(わたしは、あの子の手を離したくなかったのだ。この先も、ずっと。)
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月白・蒼衣

Author:月白・蒼衣
銀誓館学園高等部2年5組
魔弾術士×月のエアライダー

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