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忘れないで。

2008.10.10 *Fri
言えるわけ、なかった。
「例えばの話をしようか、アオイ」

声と共に、少女と見間違えるくらいに白く細い手が、髪を撫でる。蒼衣は幸せそうに目を細めて、なぁに?と首を傾げた。
長い、長い白金の髪が、さらりと流れ落ちてゆく。

「もしも、ね。……死んでしまった大切な人を、忘れられるとして」
「…うん」
「それと同じように、自分が死んだら忘れてもらえると、して」
「……、…うん」
「君は、忘れたいと願う?忘れられたいと、願う?」

優しいいろを宿した碧空の瞳が、真っ直ぐに蒼銀の瞳を見る。まだ幼い蒼衣には、その質問は酷く難しいものに思えて。僅かに眉を寄せて、ええと、と僅かに言葉に詰まる。

「アオイはね、……どっちも、願わない」
死んでしまった人を忘れるというのは、その人が本当に居なくなってしまう事と同じで。自分が誰にも思い出してもらえなくなるのも、きっと同じ。そしてそれはとても、寂しくて悲しいものだと、思う。
考えれば考えただけ悲しくなって、温い雫が一筋、蒼衣の白い頬を伝って落ちた。

「…そっか。難しい質問だった、ね。ごめん」
華奢な蒼衣の体を、そっと抱き寄せて。少年はぼんやりと、窓の外を見た。忘れたくないし、忘れられたくない。そう願うこの子に、自分が望む事は。

「君はずっと、そうやって願い続けるのかな。辛いこともみんな、忘れないまま大人になってゆくの、かな」
濡れたあおいろが、不思議そうに少年を見上げる。見えない表情。何か言おうとして、けれど言葉を見つけられず、蒼衣は大人しく続きを待った。

「それとも、どうしても忘れたいようなことが出来て……いつかは僕のことも、忘れてくれるかな」
深く澄み透った碧が、願うようにゆるゆる、伏せられる。
先の見えた命だから、出来れば、この子の傷にならないように全て忘れてくれたら、いい。
まだこんなにも幼い彼女だからきっと、忘れてもまたすぐに違う記憶が埋めてくれるだろうから。本心から、そう願っている。だけど、本当は、

「……アオイは忘れない、よ。     のことだけは、絶対忘れないから」


――ね?と無邪気に笑う彼女の心に、少しでいいから残りたいと望む自分も、いる。


( 忘れないで。ほんとうはそう言いたかったんだ )
( 微笑の奥に隠したことばを、わたしは聞き取れないまま )
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月白・蒼衣

Author:月白・蒼衣
銀誓館学園高等部2年5組
魔弾術士×月のエアライダー

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