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離れてみて、時間を経てから、ようやく見えてきたものがあるんだ。

2010.08.05 *Thu


( ある日の昼下がり、英国紳士と少女の話。 )







「行き成り尋ねてきて悪いね、何年ぶりだろう、…もう7年位かな?」
落ち着いた、深みのある声が室内に響く。色の薄い金髪に、灰色がかった青い瞳。年老いた男性は、ぎこちなく微笑んで首を傾ける。机に並んだ、二つのティーカップ。少女は椅子に座って、冷ややかに目を細めた。
「……世間話しに来たんじゃ、ありませんよね。何の用ですか」
「嗚呼、……そうだな、今日は謝りに、来たんだ」
ぴくり、カップを握る少女の指に、力が入る。先を促すように。けれど聞きたくないような。僅かに眉を寄せて、少女は男性を見つめる。男性の頭が、深く下がった。響く、少しだけ震えた声。
「本当に、済まなかった。許して貰えるとは思っていない。けれど、…済まなかった」
「…謝らないでください」
「しかし、」
「っ…貴方、が」
搾り出すような、常より大きな声。些か乱暴に置かれたカップが音を立てて。少女はゆらゆら、揺れるあおい瞳を前に向けた。
「……貴方が悔い続ければ、私はあの日をやり直せるんですか。…戻って、…来るん、ですか」
「……」
「許されないと分かっているなら、これは自己満足です。甘えないで。…私は許すなんて、出来ない」
言い切って、少女は目元を覆う。男性は俯いて、しんと、落ちる沈黙。だけど。不意に、その沈黙を破ったのは少女の方だった。
「…恨む事も、もう止めました。……顔、上げてください」
ほんの少し、和らぐ口調。男性が驚いた様に顔を上げれば、鮮やかなあおいろとかち合った。澱みの無い、透けるような色。
「逃げ出して、…随分、逃げ続けて、私にもほんの少しだけ、見えたものが、ありました」
「見えた、…物?」
こくり、少女が首を縦に振る。上手くは言えないけど、小さく付け加えて。真っ直ぐに自分を見つめる少女に、男性は不思議そうに首を傾げる。
「何て言う、か。……恨み続けても、嘆き続けても、…何も変わらなくて。生きている、私は、…否応無しに、進まざるを得ない」
「…うん」
「だったら、…恨むより、少しずつでも、理解しようとした方が、いいじゃないですか。……それに、ほら」
ぎこちなく紡いでいた言葉を止めて、少女は緩やかに、首を傾げる。口元を押さえた男性が先を促す様に見詰めれば、少女はゆっくり、口を開き直した。
「貴方にとったら、歌うお人形だったのかも、しれないけど。…私にとっては、大切な肉親、ですから」
ね。ほんの少し、寂しい様な、けれど柔らかな笑みを口元に浮かべて。言い終えた少女は緩々、溜息を漏らす。男性は言葉を失った様に、少女を見詰めて、それから小さくもう一度、済まなかった。囁いた。


離れてみて、時間を経てから、ようやく見えてきたものがあるんだ。

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月白・蒼衣

Author:月白・蒼衣
銀誓館学園高等部2年5組
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