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もう何を言ってもきみには届かないのかな。

2010.10.09 *Sat
夏の盛り、ある午前中の話。




色の褪せ始めた楽譜。掃除の途中、何気なく手に取ったそれの、余白。僅かに擦れた様になっている異国の言葉を指で辿れば、緩やかな溜息が漏れた。時を経ても尚、柔らかみを失わない、綺麗な字。あのひとらしいなぁ、ぼんやり思って、瞼を落とす。
勉強熱心で、頭の良い、人だった。英語は勿論、時折私の為に、と、ぎこちなくも優しく話してくれていた日本語も、気付けば当たり前の様に使いこなしていて。本当に、聡明な、人だった。
私はそれが嬉しくて、憧れて。あのひとに頼み込んで、フランス語を教わったのだ。それはやっぱりあのひとの様にはいかなかったけれど、それでも楽しかった。嬉しかった。学ぶのは勿論、あの人が幸せそうに笑ってくれるから。

かさり、微かな音を立てる楽譜を棚に戻す。ぐるぐる、頭の中を満たす懐古の想い。振り切るように頭を振って、背を向けかけて、けれど。目に入った写真立てに、どうしようも無く息が詰まった。寄り添って笑う、女の子と男の子。たった一枚だけのあの日の欠片。今にも笑い声が聞こえそうで、焦がれる様な感覚が、私の背を押す。そっと、伸ばした指先が触れるのは、冷たい、硝子板。

「――私、ね、」
誰も居ない。聞こえない。分かっているけれど、開いてしまった唇は言葉を捜す。貴方と話したくて勉強したの。何時か貴方が、私にしてくれていたように。貴方の言葉で、貴方、に。沢山、沢山勉強して、今なら絶対に、貴方と話す事だって出来るはずなのに。なの、に、。
「……折角覚えたのに、ね。なのに、」あなたに届かないなんて、笑っちゃうわ。漸く吐き出した声は震えていて、何だか少し情けない。最後は上手く言葉にならなかった。何だか少しだけ、目の奥が痛い。
見据えた先。写真の中の笑顔が、ぼやけて見えた気が、した。


( 意味が無いなんてあんまりだ。 )
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月白・蒼衣

Author:月白・蒼衣
銀誓館学園高等部2年5組
魔弾術士×月のエアライダー

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